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生物系の伊藤竜一准教授、中島耕大さん(2016年度卒業、現・名古屋大学大学院)、上智大学理工学部の藤原誠准教授らの研究グループは、植物特有の細胞小器官「プラスチド(色素体)」の正常形態維持に TGD5 遺伝子が必要であることを明らかにしました。この研究成果は、英国の植物科学専門誌「The Plant Journal」に掲載されました。
薬剤により突然変異を誘発したシロイヌナズナ(アブラナ科植物)約 6,700 個体の顕微鏡観察から見いだされた突然変異体 “suba1 (stromule biogenesis altered 1)” では、葉の表皮、花弁、花粉など、様々な細胞でプラスチドが異常な形態を示しました。とりわけ、“ストロミュール” と呼ばれる、すば(¶)のような細い管状の構造が過剰に形成されていました(写真)。その一方で、同じくプラスチドの一種である葉肉細胞葉緑体では、形態の変化は見られませんでした。古典的な遺伝子マッピングと全ゲノムシークエンシング(塩基配列決定)とを組み合わせた変異解析の結果、suba1 変異体の表現型は TGD5 遺伝子の機能喪失変異(第2イントロンのRNAスプライシング不全)によってもたらされることが判明しました。

suba1 変異体の葉表皮細胞で見られるプラスチド。
ストロミュール(細管状構造)の過剰形成が見られる。

TGD5 遺伝子がコードするタンパク質は、小胞体(ER)からプラスチドへの脂質輸送に関与していると考えられていることから、
・非葉肉型プラスチドでは ER→プラスチド間脂質輸送が正常形態維持に必須であること
・光合成を盛んに行う葉肉細胞葉緑体と、光合成が不活発な非葉肉型プラスチドとでは、脂質合成経路の違いを反映して形態維持の仕組みも異なること

が示唆されました。

また、ストロミュールは、古くは19世紀後半から文献記載(スケッチ)がありながらも(Schimper (1883) など)、いまだその形成メカニズムは解明されていません。本研究成果は、140年来の謎であるストロミュールの形成メカニズムに関しても、「ERからの脂質輸送」という新たな角度から光を当てるものです。■

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(¶)うちなーぐち(沖縄方言)で「沖縄そば」の意。変異体名 “suba ” は「ストロミュール形成が異常」の英語表記の略称と、「沖縄そば(のようにプラスチドが細長く伸びる)」のダブルミーニングである。うちなーぐち由来の変異体名の学術論文記載は、もしかすると史上初かも知れない。なお、もう一つの suba 変異体 “suba2 ” については、Itoh et al. (2018)Ishikawa et al. (2020) を参照されたい。

 


<論文情報>

タイトル:TGD5 is required for normal morphogenesis of non-mesophyll plastids, but not mesophyll chloroplasts, in Arabidopsis

掲載誌:The Plant Journal

著者:伊藤竜一(1,*)、中島耕大(1)、佐々木駿(2)、石川浩樹(2)、風間裕介(3)、阿部知子(3)、藤原誠(2)
1 琉球大学理学部海洋自然科学科生物系    2 上智大学理工学部物質生命理工学科
3 理化学研究所仁科加速器科学研究センター (所属はすべて研究当時のもの)
* Corresponding author(責任著者)

DOI:10.1111/tpj.15287

論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tpj.15287

問い合わせ先:ryuitoh [at] sci.u-ryukyu.ac.jp(伊藤)

 

参考文献(プラスチドやストロミュールについて、より詳しく知りたい一般の方向け)
伊藤 竜一 (2013) 葉緑体の知られざる生活.琉球大学(編)知の源泉 ― やわらかい南の学と思想5,pp. 272–287.沖縄タイムス社,那覇.

生物系の有賀和さん(2019年度卒業)と広瀬裕一教授の研究成果が「Zoological Science」(日本動物学会の英文誌)早期公開版に掲載されました(2021年4月8日)。本研究は、砂を体に付着できるクロナマコと、クロナマコと近縁だが砂を体に付けないニセクロナマコとを比較することにより、ナマコが体に砂をつける仕組みを探ったものです。

タイトル:How to Wear a Sandy Coat: Secretory Cells in the Dorsal Epidermis in the Sea Cucumber Holothuria atra (Echinodermata: Holothuroidea)
    (和訳)砂の衣を着る方法:クロナマコ背面表皮の分泌細胞について
雑誌名:Zoological Science
著 者:Nodoka Aruga, Euichi Hirose (有賀和、広瀬裕一)
論文URL: https://doi.org/10.2108/zs200171

琉球大学公式ウェブサイトでの紹介記事: https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/21822/

シアノバクテリア(藍藻)の一種アカリオクロリスが不要になったアンテナ色素を放棄したり再獲得したりしていることを、モンタナ大学と神戸大学を中心とする研究グループが明らかにしました。本研究は、光合成の適応進化について新たな知見をもたらすものです。この研究には、生物系の広瀬裕一教授が参加しています。詳しくは下記リンクの記事をご覧ください。

<神戸大学HPへのリンク>
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2021_03_23_01.html
<論文(英文)へのリンク>
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982221001123

延期になっていました伊澤雅子名誉教授の最終講義、並びに、今年度3月で御退職される横田昌嗣教授の最終講義を以下の通り開催いたします。新型コロナウィルス感染防止の観点から、学外の方はZOOMでご参加いただくことになります。参加をご希望の方は傳田(denda@sci.u-ryukyu.ac.jp)までご連絡をお願いいたします。

伊澤雅子先生 最終講義  「けものに出会う」
日時:3月27日(土曜日)13:00から
場所:理528室

横田昌嗣先生 最終講義  「沖縄の植物と歩んだ38年」
日時:3月27日(土曜日)15:30から
場所:理528室


2020年11月21日-23日にオンラインで開催された第23回日本サンゴ礁学会にて、理工学研究科博士前期課程2年の山極広孝さん(ライマー研究室)らによる「沖縄島中城湾における1975-1976年から2020年にかけての造礁サンゴ群集変遷についての生態学的調査」が最優秀ポスター発表賞に選定されました。

生物系のライマー・ジェームス(James D. Reimer)准教授と栗原晴子助教が,サンゴ礁科学の学術雑誌「Coral Reefs」(Springer Nature 発行)の編集委員(Editorial Board)に加わりました.

編集委員リスト:https://www.springer.com/journal/338/editors

堤 元佐 先生(自然科学研究機構 生理学研究所)を講師にお招きして、
公開講演会「蛍光イメージングの最新動向」を開催します。

ふるってご参加ください。

集中講義「生命機能学特殊講義C」を下記の通り実施します。

理工学研究科博士後期課程の櫛田優花(くしだ・ゆか)さん(ライマー研究室)のウミエラ新種発見・記載の論文 (#) が,各種メディアで取り上げられました.

NHK NEWS WEB 鹿児島「奄美大島で新種の海の生き物発見」
2020年12月17日 11:56
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/20201217/5050012954.html

沖縄タイムス+プラス「名前の由来は血を吸う妖怪『飛縁魔』 奄美沖で発見された新種」
2020年11月22日 10:54
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/667643

南海日日新聞「大島海峡で新種発見 『カリベレムノン ヒノエンマ』 妖怪にちなみ命名 瀬戸内町」
http://www.nankainn.com/weather/%e5%a4%a7%e5%b3%b6%e6%b5%b7%e5%b3%a1%e3%81%a7%e6%96%b0%e7%a8%ae%e7%99%ba%e8%a6%8b%e3%80%80%e3%80%8c%e3%82%ab%e3%83%aa%e3%83%99%e3%83%ac%e3%83%a0%e3%83%8e%e3%83%b3%e3%80%80%e3%83%92%e3%83%8e%e3%82%a8

(#) Kushida, Y., Reimer, J.D. Description of the sea pen Calibelemnon hinoenma sp. nov. from shallow waters in southern Japan. Mar. Biodivers. 50, 107 (2020). https://doi.org/10.1007/s12526-020-01132-1

集中講義「海洋生物生産学特殊講義C」を下記の通り実施します。

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