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小林峻助教、有光暁准教授(同化学系)、伊澤雅子名誉教授らの論文が、2023年度日本昆虫学会論文賞を受賞しました。同賞は、日本昆虫学会が発行する英文誌Entomological Scienceまたは和文誌昆虫(ニューシリーズ)に掲載された論文から、毎年2編の論文に授与される賞です。2023年9月16日に佐賀大学で開催された日本昆虫学会第83回大会で授賞式が行われました。

<受賞論文> ※論文の詳細な内容はページ下部に表示しています。
Kobayashi S., Takaoka C., Tanimoto H., Arimitsu S., Izawa M. 2022. Effect of spraying behavior and body size on predators of the big head stick insect Megacrania tsudai (Phasmatodea: Phasmatidae). Entomological Science 25(2): e12508. DOI: https://doi.org/10.1111/ens.12508

 

 

 

<論文内容>

先島諸島と台湾に分布するツダナナフシは、襲われるとミントの香りのする液体を噴射することが知られており、捕食者による攻撃から身を守るためのものだとされていました。しかし、実際に捕食者に対して防御効果があるかどうかは明らかになっていませんでした。また、本種は卵から孵化した際には体長が3㎝ほどですが、成虫になると10㎝を超えるというように、成長に伴い体サイズが大きく変化します。そこで、本研究では防御液の効果と成長に伴う体サイズの変化が天敵からの捕食回避にどのように機能しているかを明らかにすることを目的としました。

蒸留水とツダナナフシから採集した防御液を捕食者と思われる動物に滴下した実験を行った結果、蒸留水の場合には何も反応しませんでしたが、防御液の場合には昆虫や鳥など様々な動物がぬぐい取る行動をしました。この結果から、防御液には捕食者に対して忌避行動を引き起こす効果があることが明らかとなりました。また、体サイズが小さい幼虫のうちは、防御液がなくなっている状態では、昆虫から鳥まで様々な動物に捕食されてしまいましたが、成虫になると防御液がなくても、体サイズの効果により鳥以外の捕食者には捕食されなくなりました。

これまでに我々のチームの研究で、防御液の成分は成長しても変わらないことや*、体色は緑色で鳥が餌植物の葉の色と識別しにくいという背景同調をしていることを**、明らかにしてきました。さらに、本種は卵による海流分散により分布域を拡大していることが示唆されていますが、これは孵化する場所が不確実な分散方法です***。分散先が確定できないと、捕食者が想定できないため、様々な捕食者に対して防御策を講じる必要があります。本種の場合には、幼虫から成虫まで体色を餌植物の色と同調させることで鳥からの識別から逃れると同時に、防御液を噴射することで鳥以外の動物からの捕食も回避していると考えられます。このように複数の防御方法を組み合わせることにより、分散先でもあらゆる動物からの捕食を避けることができると考えられます。本研究の結果は、動物の分散方法の進化と防御機構の進化が関連していることを示唆しています。

 

<関連論文>

* Kobayashi S., Arimitsu S., Takaoka C., Ono T., Izawa M. 2023. Quantitative chemical analysis of defensive secretion of Megacrania tsudai (Phasmatidae) and effect of actinidine on its potential predators. Journal of Chemical Ecology. https://doi.org/10.1007/s10886-023-01441-2

** Kajiwara Y., Kobayashi S., Mochida K., Fujimoto S., Yamahira K., Izawa M. 2021. An attempt of the predation avoidance mechanism of Tsuda’s giant stick insect, Megacrania tsudai (Phasmatodea: Phasmatidae), based on the spectral reflectance of the insect and a Pandanus odoratissimus leaf. The Biological Magazine, Okinawa, 59: 51–56.

*** Kobayashi S., Usui R., Nomoto K., Ushirokita M., Denda T., Izawa M. 2014. Does egg dispersal occur via the ocean in the stick insect Megacrania tsudai (Phasmida: Phasmatidae)?. Ecological Research, 29(6): 1025–1032. DOI: 10.1007/s11284-014-1188-4

 

生物系の小枝圭太助教が2023年度の日本魚類学会奨励賞を受賞しました。
本賞は優れた研究成果をあげ,魚類学の進歩に寄与し,将来の発展が期待される40歳未満の会員が対象です。小枝助教によるハタンポ科魚類の生態学的および分類学的研究ならびにその後の多くの分類学的研究やいくつかの魚類図鑑の出版が日本近海の魚類多様性に関する研究に大きな貢献をしたとして評価されました。
贈呈式は9月1日に2023年度日本魚類学会年会(長崎大会)にておこなわれました。贈呈式に続いて、受賞者講演がおこなわれ、琉球大学からスタートした研究から黒潮流域全域の魚類相を調べるに至った研究の経緯や、過去と現在の魚類相を比較した最近の研究が紹介されました。

 

贈呈式にて瀬能会長より賞状の授与(写真提供:木村清志氏)

受賞者講演には多くの魚類学会員が参加(写真提供:魚類学会若手の会)

懇親会での学会賞受賞者表彰の様子(写真提供:木村清志氏)

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